研究概要 |
コンクリートの高強度化が,そのひび割れ抵抗性能及び破壊強度の寸法依存性に及ぼす影響について,破壊力学的立場から検討した結果,以下の成果を得た。 イ).RILEMの標準試験体(断面100×100mm)の切欠き梁を用いた実験では,圧縮強度の増大と共に約80MPaまで破壊エネルギーの増大傾向が認められたものの,100MPaを超えるとむしろ減少傾向を示した。それに対して最小寸法試験体と最大寸法試験体の寸法比が1:6まで変化させた換挿入型割裂試験を行った結果,破壊エネルギーとコンクリート強度の関係は,とりわけ100MPaにおいて試験体寸法の影響を大きく受け,試験体が最大の時に最も大きな値が得られた。この原因を探る為に,各々の試験体の荷重一切欠き肩口開口変位曲線の接線剛性変化率を調べた結果,大型試験体では微細破壊領域が十分に形成された後に〓の崩壊に至るのに対して,小型試験体ではその領域が十分に形成される前に崩壊する為である事が明らかとなった。 2).コンクリートの高強度化は,水セメント比の低減やシリカフュームなどのセメント粒子よりも細い粒子の混入によって,マトリックスの微細構造をより緻密にする事により実現される。このような材料内部の変化は,破壊力学パラメータの中でも特に引張軟化則の結合応力の限界値,即ちひびわれ開始応力の大きさに影響を及ぼすこと,結合応力の限界値はコンクリートの細孔構造と密接な関係にある事が明らかとなった。 3).標準試験によって評価される3つのパラメータから構成される脆性化指標によって,コンクリートの高強度化に伴うひびわれ抵抗性能の変化は,試験体寸法の影響もあまり受ける事なく適切に評価される。 4).鋼繊維補強高強度コンクリートのせん断破壊実験の結果,鋼繊維混入によって脆性的なせん断クラックの発生は抑制される事が示された。
|