本研究は、設計者がイメージの中でどのように空間を見ているかという点に焦点をあてて、空間の操作を明らかにすることで、設計の方法に新たな知見を示そうとするものである。これまでの分析から以下のことが明らかになった。 (1)設計する空間に数多くの『視点』をつくりながら空間認識を重ねている被験者と、少ない『視点』で空間を設計している被験者がいる。 (2)『視点』の総数が特に多いグループ(St3、St10)と多いグループ(St1、St2、St8、St9)とでは、各期間の出現比率が比較的平均しているが、『視点』の総数が少ないグループ(St4、St5、St6、St7)は全員前期の比率が低く、偏った『視点』の構成になっている。 (3)『視点』の要素である「位置」と「対象」との組合わせによって、10の『視点』の類型が設定された。この『視点』の類型は、設計の初期からよく用いられる4つの類型(Spo、Sp-o、Sp-oo、Spo-o)と、用いられることが少なく設計の中期以降になって使われ始める6つの類型(Spoo、Sp-o-o、Sppo、Sp-p-o、Spp-o、Spo-p)とがあった。 (4)SpoまたはSp-oという1つの類型を集中して使っている被験者と、各類型を偏りなくほぼ均等に用いている被験者があり、その使い方によって被験者が区分された。 (5)『視点』を展開させる特徴的な操作として、2つの『視点』が組み合わされて新しい『視点』をつくっている結合と、『視点』の「位置」または「対象」の空間が2つに分けられて、新しい『視点』が生まれている分割とが認められた。 (6)『視点』の軸には、連結という操作があり、複数の空間の関係を捉え具体的にそれぞれを結び付けるとともに『視点』の展開に活性を与えている。
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