研究概要 |
2ヶ年間の図書館4施設,病院4施設の空間探索行動実験の結果(各施設10人,ただし1図書館のみ2グループに分けて14人)から次のような知見が得られた. 1.図書館と病院では空間及び空間情報の体系の複雑さがかなり異なるが,「迷う」という視点から見ると,両者にあまり差は無く,むしろ図書館,病院とも「空間の見通しの良さ」と「空間情報の設定の適切さ」によって差異が生じることが確認できた.これによって,空間の設計及びサイン計画の重要性を指摘できる. 2.図書館同士の比較では,4施設とも吹抜けを持っているが,探索に配慮した見通しの良い吹抜けを持つ図書館では,形態情報(階段等)も有効に活用されて「迷い」や「カウンターでの情報入手」が少なくなり,探索に配慮した空間計画の重要さが確認できた. 3.病院同士の比較では,4施設とも吹抜けを持ち,そのうち3施設はエントランス部に配置され,このタイプは3階段の探索行動では位置の確認に有効に機能するが,残りの1施設は吹抜けが診察部に限定されているため全体の見通しが悪く,そのため受付での人による情報入手が最も多いという結果が現れた. 4.2ヶ年8施設の空間探索行動実験の結果から,吹抜け等による空間の見通しの重要さと,階段等の形態情報の重要性と役割,空間と対応させたサイン情報の重要性と役割を明確にすることができた.また1階から2階へ行く等の階をまたがる探索では,階段等を吹抜けの一部等に設定することによって,探索途中で階段を探索することによるそれ以前の情報の喪失を防げること等を明らかにすることができた.以上,探索思考と情報の整合についての実験により多くの具体的な知見を得た.
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