研究概要 |
本研究は,住民合意をふまえない建築協定制度の諸問題や協定の定着状況を把握した上で,建築協定を有効に活用するための方策や合意活動などの手法を検討するものである。明らかにされた研究内容は,主として次のとおりである。1.主要な自治体での建築協定や地区計画等の事例収集を行い,市街地の形態別に運用状況や制限内容の特徴を把握したが,制限内容が住環境の多様化に充分に対応していない傾向が見られた。2.建築協定や地区計画が締結された住宅団地の実例調査を行い,環境デザインの空間的特性と制限内容との対応実態を分析した。その結果,景観形成に重要な建築意匠,付属建築物の形態等については,空間構成の特徴と制限内容とが充分に対応していない地区が多く見られた。3.戸建て住宅地における環境デザインの住環境保全に与える影響を調査・分析した結果,住環境保全行為には環境デザインに対する住民の評価と,空間構成による領域形成との影響があることがわかった。4.住環境の保全・誘導に対する合意形成の方策について検討するために,現代のライフスタイルの傾向を把握した。また,先進的なまちづくりの事例を収集し,その特徴を分析した結果,異なった世代間の交流を強化するような企てやCIのようなイメージ戦略も必要であることがわかった。5.戦前開発の郊外住宅地を対象に,長期間にわたる住環境の形成過程を明らかにした結果,住環境の形成過程は都市機能として見たときの都心度に大きな影響力があり,住環境の形成パターンは(1)都心型(変容停滞型,低数値終結型),(2)衛星都市型(山並型,横ばい型),(3)郊外型(下降型,無傾向型)に大別できることがわかった。6.都市計画法及び建築基準法の改正に伴う新しい用途地域制に対応した建築協定の運用方法を検討し,住民主体による協定運営体制を定着させるために有効な誘導的手法を考察した。
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