近年京都における火災に関係する史料・絵図を収集し、以下の点を明らかにした。 1.巨大都市火災の固有性について 京都を中心に江戸・大坂などの近世巨大都市に頻発した大火の性状は、(1)大規模性、(2)連鎖性、(3)突発性、(4)頻発性、(5)人為性、(6)罹災後の復興の迅速性、の6点から整理することができ、これらは他の近世都市とは異なる近世巨大都市固有の性格を有していた。 2.大火の実態について 京都に未曾有の被害をもたらした天明8年(1787)の大火の実態を『天明炎上記』『京都大火』『京都大火記録』などの記録、大火後に木版刷で刊行された「極本」などから明らかにした。 3.近世の火災対策 近世に頻発する火災に対して、どのような対策がとられていたかを検討し、以下の項目に整理してソフト・ハード両面で確立していた火災対策の実態を明らかにした。(1)火の用心、(2)初期消火、(3)隣保組識と消火システム、(4)延焼防止、(5)建築の不燃化。 4.罹災後の処理 火災が発生し、消火した後の対策を以下の項目ごとに明らかにした。(1)罹災民の救恤、(2)治安の維持、(3)家屋再建の督促と仮覆いの禁止、(4)一定期間の建築資材・手間賃等の物価統制、(5)地業・町並みの整序、(6)火災の実態調査と周知、(7)新たな都市計画の実行。 5.火災と都市形成 以上の検討をふまえて、(1)浄化作用としての火災と都市形成、(2)町共同体と火災の相補的関係、の2つの視角から、火災と都市に関わる若干の視点を提示した。
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