研究概要 |
昨年度に引き続き,坑内作業場のうちで最も車輌系鉱山機械の排ガスに暴露される機会の多い運搬坑道において,LHDの排ガス中の有害物質,とくに,ベンゾ(a)ピレン(BaP)を中心に,各所の空気中濃度を測定した。その結果,LHDから排出される生ガス中には,人体影響の点からみて見逃すことのできない程の高濃度のBaPが検出されたが,坑道各所では,局部扇風機を配置するだけの簡単な通気でも希釈が十分に行われ,LHD稼働時にはエンジン始動時の不完全燃焼ガスのためBaP濃度が高いが,エンジンが通常運転状態に入いると,時間経過と共にBaP濃度は減少し,60分経過では10ng/m^3の低濃度に落ち着き,作業者への影響は無視できることが明らかにできた。その他,LHDに装備されているウォータースクラバー形式の除じん装置は,極めて有効で,BaP汚染防止に大きな役割を果たしていること。局部扇風機を使用して通気量の増大を図ればかなり改善が可能であることが判明し,保安上の対策も容易であることがわかった。また,この実験・測定を通して,坑内空気中の多環芳香族炭化水素および重金属濃度は,労働衛生上の許容濃度よりはるかに低いものであり,人体影響は特別に考慮を要しないこと,BaPは多環芳香族炭化水素の各物質とよい相関があり,今後エンジン排ガスの指標として用いてもよいことが確認された。
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