研究概要 |
複雑硫化鉱の製錬で大量に生成する溶錬ダスト,ドロス,III-V化合物半導体のスクラップ中には大量の砒素,アンチモンの他に種々の有価金属が含まれる.有価元素を金属鉛で抽出し,同時に砒素,アンチモンをスパイスとして濃縮,分離するプロセスが考えられる.このプロセスを検討するために,本研究ではPb-Fe-Cu-Sb,Pb-Fe-As-Sb系の1473Kにおける2液相分離範囲を実験によって決め、Pb-Fe-As,Pb-Fe-Sb,Pb-Fe-Cu-As等の相平衡に関する報告と共に考察した.またPb-Fe-As3元素においてスパイス組成が25,30,35mass%Asでの2相間の微量元素の分配挙動について実験を行い次の様な結論を得た. 1.製練中間産物に最も多く含まれる鉛によって有価金属を回収し,砒素をスパイス中に濃縮して分離するためには系に銅が含まれないPb-Fe-As系の,スパイス-鉛相間の相互溶解度が小さい鉄系スパイスを用いれば,分離,回収のプロセスを効率よく進めることが可能であることが明らかになった. 2.鉄系スパイスを用いる時はAg,Au,Bi,In,Se,Teは効率よく鉛によって回収することが可能である. 3.共存するGa,Co,Niはスパイスに分配され,鉛による回収はできない. 4.微量の銅はスパイス成分にもかかわらず2相間の分配係数は1に近く,鉛によりある程度回収することが可能であるが,銅濃度が上昇するとスパイスへの分配割合が増加し,鉛中の砒素濃度が高くなり,また金,銀のスパイスへの損失も増大することから,銅を含む二次資源を用いないことが望ましい.
|