研究概要 |
メカニカルアロイング(MA)法により作製したP/Mアルミニウム合金及び高圧鋳造と熱間押出により作製したSiCウイスカー強化アルミニウム合金複合材料においては,マトリックスに微細結晶粒組織が導入されているため,高温強度の低下と高温延性の増大が起こり,極端な場合には,超塑性が発現する。高温域での低強度と高延性は,熱間加工プロセスにおいては有益な特性であるが,材料の使用段階においては高温での高い強度が望ましいことは言うまでもない。そこで,これら材料を実験室的に作製し,一方向焼鈍を行ってマトリックスを粗大伸長粒組織に変えることにより,高温強度の向上を図った。 MA法によるP/Mアルミニウム合金においては,マトリックスの微細結晶粒組織は高温加熱に対してきわめて安定で,一方向焼鈍によって粗大伸長粒組織にすることはできなかった。これは,きわめて微細な分散粒子がMAによって導入され,それが結晶粒界や亜結晶粒界の移動を妨げる効果を及ぼすからである。一方,SiCウイスカー強化複合材料においては,一方向焼鈍によりマトリックスは粗大結晶粒組織とすることができた。複合材料においては分散相は比較的粗く,再結晶粒が成長粗大化しやすいためと考えられる。複合材料においては,一方向焼鈍によってかなりの軟化が起こり,常温引張強さは低下した。熱間押出時にマトリックスに形成される加工組織が常温強さに大きな寄与をしており,強化材であるウイスカーの強さへの寄与は実際には小さいことがわかった。しかし,一方向焼鈍によって673Kでの高温引張強さはわずかではあるが増加した。マトリックスの結晶粒を粗大化させることにより,高温変形における粒界すべりの寄与が抑制され,高温強度の向上と高温延性の低下がもたらされることを明らかにすることができた。
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