研究概要 |
PbはFeと反応せず、Pb融液中にFeはほとんど溶解しないので、Tiを添加したPb融液中でFeを加熱すると、TiだけをFeに拡散浸透させることができる。この操作を炭素鋼に施せば、内部からCの拡散が期待できるので、その表面にTiC被膜が形成する。本研究はこのような観点から、Tiを0.1〜5mass%添加した1173〜1373KのPb融液中における炭素鋼(S15C,S25C,S35C,S45C,S55CおよびSK5)のTiC形成反応を調べ、次のような知見と結論を得た。 1.Pb-Ti融液中で炭素鋼を加熱すると、炭素鋼のC含有量のいかんにかかわらず、Ti添加量が0.5mass%以下のときはTiC層だけが形成し、1mass%以上のときはその上にTi┣D22PbC層が形成する。 2.得られるTiC層の厚さはTi添加量が多いほど厚いが、1mass%以上の添加量では変わらない。 3.Ti添加量が同じであれば、TiC層の厚さは炭素鋼のC含有量が多いほど、また加熱温度が高いほど厚く、加熱時間の平方根に比例して増大する。 4.TiC層の濃度は化学量論的組成に近いが、素地近傍にFeやPbが若干濃化する。 5.TiC層のビッカース硬さは3000〜3500程度であり、Ti_2PbC層のそれは100程度である。 6.TiC層の結晶粒は(220)面が素地に平行に配向したものが多く、そのためTi-炭素鋼拡散対に形成するTiCよりも成長速度が数倍速い。 7.Pb-Ti融液浸漬法は複雑な装置を必要とせず、処理操作が簡単であり、得られる皮膜も優れているので、炭素鋼へのTiC被覆法として有望である。
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