研究概要 |
本年度得られた成果は以下に述べる2点にまとめられる。 1,まずセリア添加正方晶ジルコニアセラミックスの繰り返し熱処理時の正方晶一単斜晶相変態挙動を検討した。その結果,第一回目の冷却時に起こる正方晶→単斜晶相変態は,変態温度幅が2K以下という非常に狭い温度範囲で起こるが,冷却・加熱サイクル数の増加に伴ない,変態開始温度が高温側へシフトすると同時に,変態が多段で起こる現象を見い出した。しかしながら,この際各段の変態度幅は2K以下と,いぜん非常に狭いままであった。またこの変態挙動は,冷却・加熱サイクル中に挿入した熱処理(高温での)により大きな影響を受けることが判明した。これらの現象は,相変態に伴ない粒界に発生するマイクロクラックと,変態に伴なう体積膨張・収縮による徴視的な残留応力の存在に大きく影響を受けた結果であると結論した。 2.次いでセリア添加ジルコニアセラミックスの相変態に及ぼす水素還元の影響を検討した。800℃以上で水素還元を行なうとCe(IV)イオンが完全にCe(III)イオンに還元されることを,また,これに伴ないジルコニアセラミックスの体積膨張と酸素空孔の導入が起こることを見い出した。このように水素還元したセリア添加ジルコニアセラミックスでは,熱誘起相変態や応力誘起相変態が起こらなくなった。これらの結果からジルコニアセラミックス中に存在する酸素空孔が,ジルコニアでの正方晶一単斜晶相変態に重要な役割を果たしていると考えた。
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