研究概要 |
固体酸触媒の分野ではゼオライトをはじめとする形状選択性触媒が調製され,工業的に広く活用されているが,固体塩基触媒の分野では形状選択性を示す触媒は未だ存在せず,その調製が望まれている。本研究は将来,多岐にわたり有用と期待される形状選択性を有する固体塩基触媒を調整することを目的とした。ゼオライト細孔内に塩基性触媒である酸化マグネシウム粒子を生成させるには,マグネシウムメトキシドを非水溶媒中で含浸し,水蒸気分圧を低く保ちながら加熱分解する方法が良いことが分った。また,アルカリ金属酸化物の微粒子を細孔内に生成させるには,アルカリの酢酸塩を用いる方法を考察した。これら塩基性酸化物を細孔内に有するゼオライトは,単純なイオン交換だけでは発現しない強い塩基点を有することが,炭酸ガスの昇温脱離法,吸着種の赤外スペクトルによる観察によって明らかになった。これらの触媒は,トブテンのような小さい分子の反応には高い塩基触媒活性を示すが,アリルベンゼンのような大きい分子の反応には活性を示さない。すなわち,ゼオライト細孔内にアルカリ金属酸化物や酸化マグネシウムなどの塩基性物質を含有する触媒は,分子の大きさによって反応性を制御できる固体塩基触媒として作用することが明らかとなった。X線吸収スペクトルの解析より,固体表面に生成する塩基性点は,表面酸素イオンのイオン性が大きい程強い塩基点として作用すると結論された。金属酸化物の粒子が小さくなると,表面酸素イオンのイオン性も減少し,塩基性も弱くなることが示された。
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