アルカリ金属-グラファイト層間化合物は、アルカリ金属とグラファイト層の間に電荷移動が起こるため、もとの構成成分物質がもたない化学的特性を有するという特徴がある。また層間に挿入したアルカリ金属が層間ピラーとなって新たな物理的特性である分子篩機能を有するという特徴もある。本研究は、これらの特徴が触媒としてどのように発揮されるかを調べる目的で行った。 脂肪族オレフィンの異性化反応では、以下のことが見いだされた。直鎖オレフィンの異性化反応速度は炭素数が多くなると大となるが、メチル基置換した分枝オレフィンはむしろ小さくなる。この点に着目して1-ブテンと3-メチル-1-ブテンの競争異性化反応に焦点を絞り、グラファイト層間化合物の層間距離をポリマー修飾して変化させ、反応選択性との相関について調べたところ、層間距離を小さくすることによって反応分子の最小径の大きい分子の反応性が著しく低下することが見いだされた。この結果は、ポリマー修飾により分子篩効果に基づく選択性を改良することができることを示唆している。 芳香族化合物、すなわち、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンのオレフィンによるアルキル化反応においては、以下のことが見いだされた。ベンゼンではアルキル化は起こらず、トルエン及びエチルベンゼンでは、側鎖アルキル化が起こり、トルエンの方がアルキル化され易い。さらにトルエンとエチレンの反応に焦点を絞り反応速度に対する圧依存性を調べたところ、反応速度は、エチレン圧に関してほぼ1次、トルエン圧に関してほぼマイナス1次であった。これは、6種類のアルカリ金属-グラファイト層間化合物上の反応速度はKC_8>RbC_8>KC_<24>>CsC_8>RbC_<24>>CsC_<24>の順であり、ゲストのアルカリ金属で比較すると、K>Rb>Csの順であることが見いだされた。
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