研究概要 |
五酸化バナジウムキセロゲル(V_2O_5・nH_2O,以下VXGとよぶ)をリチウム電池正極とする場合,層間水分子と挿入されたリチウムイオン間の相互作用が可逆的なリチウムの脱離を妨げるとこれまで考えられてきた.本研究では,層間水を極限まで少なくしたVXGの放電・充電挙動とそれにともなう構造変化を各種電解液中で調べることによって,電池正極挙動に対する層間分子の役割を明らかにしようとした. まず、ゾル-ゲル法で得たVXGをニッケル基板に塗布,乾燥して薄膜状試料電極を作製した.この試料はn=0.2で,約9A^^゚の層間距離をもつことを確認したうえ,定電流放電と放充電サイクル実験を各種の非プロトン性電解液中で行ない,そのときの電位と構造上の変化を調べ,比較・検討した. その結果,すべての電解液に対して溶媒分子の侵入が自然浸漬状態で近行し,層間が拡大することを見いだした.また放電時には,電位プラトーが2.8Vと2.6V付近とに2つ現われ,X値(Li/V 原子比)で1までリチウム挿入が可能であった.一方,どの電解液中でも充電時にリチウムはほぼ可逆的に脱離するが,X値で0.1〜0.2以下までの完全な脱離は困難であった.また放電時のリチウム挿入による構造変化は層間の縮小で,0.1<X<0.5の領域では約11A^^゚と9A^^゚の2相共存,0.5<Xの領域では約9A^^゚の単相となることが分った.さらにX=1.0までリチウムを挿入すると,電解液溶媒分子は層間から完全に脱離することを赤外線吸収スペクトルの測定によって実証した. 以上の結果から,本研究ではVXGのリチウム二次電池正極挙動における電解液溶媒と層間水の役割を明らかにした.
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