研究概要 |
本研究では以下の様な成果を得た。 1.銅クラスターの合成を行なった。配位子にはピリミジン誘導体である4-hydroxy-6-methylpyrimidine-2-thione(Me(OH)pymtH)および3,4,5,6-tetrahydropyrimidine-2-thione(H_4pymtH)を用いた。Me(OH)pymtHからは6核クラスター骨格を持つ[Cu_6(Me(OH)pymt)_6]を得た。このクラスターのCu-Cu距離は2.770(2)〜3.465(2)Aであり歪んだ八面体構造である。一方、H_4pymtHは4核クラスターを与えた。[Cu_4(H_4pymtH)_4]の組成を持ち、Cu-Cu距離は2.799(2)〜3.019(2)Aで四面体骨格を持っている。このクラスター骨格の制御がピリミジン配位子のチオール、チオン互変異性(N=C(SH)-(] SY.dblarw. [)NH-C(=S)-)の調整で可能なことを初めて明かにした。即ち多点相互作用場の設計が極めて容易になったと言える。 2.オレフィン、アルキン類と銅との反応を調べた。これにはモデル系として[Cu(phen)(HC≡CR)]CIO_4(phen=1,10-phenanthroline,R=H,Ph,CO_2Et)を用いた。これらのX線構造解析を行ない全てアルキンがside onで配位すること、C≡C結合距離は配位により伸びることを明かにした。さらに14種の系に対して安定度定数をも求め、銅の反応場のaffinityの系列を作成することに成功した。 3.バナジウムについてはchloranilic acid(H_2caを用いて3価バナジウム2核錯体の合成に成功し、その構造が[V_2(ca)Cl_2(thf)_2]であることを明かにした。 以上より、多点相互作用を行なう金属クラスターを含む多核錯体を銅、バナジウムについて合成することができた。この成果は今後CO_2、フェノール、アルコール、ケトン、カルボン酸などのと反応を行なう最適のCu-V系クラスター集合体の構造を設計し、構築するうえで極めて有用な知見を与えるものと大いに期待される。
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