研究概要 |
平成4年度-平成5年度で行った本研究成果の概要を以下に述べる。 ハロ芳香族(ArX)のハロゲン交換フッ素化反応によりフルオロ芳香族(ArF)を合成するための試薬としてKFが汎用されているが、フッ化水素(HF)を用いるArXのハロゲン交換フッ素化反応は熱力学的に不利であって行われていない。本研究では,ハロ複素環芳香族の反応をHFを用いて行った結果,反応系(ArXとHF)と生成系(ArFとHX)の平衡を考慮して生成HXガスを反応系外に速やかに除去することによりArF効率よく合成できることを見い出した。また、反応基質の置換基やHFに共存させる有機塩基の反応に及ぼす影響を明かにし、反応機構等についても検討した。基質として2-クロロピリミジン【1】を用いた場合,加圧下の場合よりも室温大気圧下の反応により2-フルオロピリミジン【2】収率が向上した。反応温度を50℃では目的生成物2が定量的に得られた。また種々の置換基をもつクロロピリミジン類も対応するフッ素化生成物で高収率で与えた。一方,2-ハロピリジン【3】および2-クロロキノリン【4】は基質1類に比べて反応性が低く,120℃以上の反応温度とHFの連続的な供給が必要であった。また3および4を基質として用いた場合,HFにEt_3N塩等の基を共存させることによりArF収率が顕著に向上した。2-クロロベンゾオキサゾールは反応温度50℃で対応するArFを殆ど与えないが,120℃に上昇することにより新規化合物2,2-ジフルオロベンゾオキサゾリン誘導体を与えた。一方,2,4-ジニトロクロロベンゼンHFにコリジン等の塩基を共存させることによって,180℃で10hの反応で目的フッ素化物を好収率で与えた。本反応は従来合成が困難とされるフルオロアジン類の効率的な合成方法として有用である。
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