研究概要 |
オキソバナジウム(V)化合物の一電子レドックス過程を効率的に駆使し、従来にない特異な合成反応を開発し、ラジカル中間体が介在する選択的な骨格形成法や官能基変換法を明らかにした。 有機ケイ素化物の一電子酸化に基づく選択的な炭素-炭素結合形成法 1.シリルエノールエーテル、シリルケテンアセタールをVO(OR)Cl_2で一電子酸化すると、カップリング生成物である1,4-ジカルボニル化合物が得られた。酸化的脱ケイ素化に基づいたカルボニル基のα位でのラジカル生成は、酸化還元電位で制御され、非対称1,4-ジカルボニル化合物の高選択的な有用合成法として確立された。 2.アリルシラン類の一電子酸化に基づく脱ケイ素化反応でも選択的な交差カップリングが見られ、1,5-ヘキサジエン類の有用な合成ルートが開発された。溶媒の選択により反応経路が変わり、アルコキシまたはクロロ基を導入することもできることが見い出された。 3.本方法による脱ケイ素化反応を、Umpolungに基づく変換法として位置づけ、分子軌道的にも考察した。 高歪カルボニル化合物の一電子酸化反応 1.シクロブタノン類との反応ではVO(OR)Cl_2がルイス酸としても機能し、一電子酸化に基づいた環開裂によるラジカル反応中間体の形成が可能となった。オレフィンに対するラジカル付加で、シクロブタノン類をC_4ユニットとする選択的な炭素-炭素結合形成法が展開された。 2.4,4-ジクロロ-2-シクロブテノンとVO(OR)Cl_2の反応では、位置選択的な環開裂によるβ,γ-不飽和エステルへの酸化的変換の起こることが判明した。
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