研究概要 |
1.アルカリ金属イオンを疎水性溶媒に可溶化する高脂溶性の嵩高い対アニオンとしてペルフルオロアルキル置換テトラフェニルホウ素アート錯体を合成し,金属塩の脂溶性及び化学的安定性に与える置換基の効果を溶解度及び酸分解速度を指標として評価した. 2.前項の脂溶性ホウ素アート錯体塩の形でジクロロメタン中に可溶化したアルカリ金属イオンは(1)塩化トリフェニルメチルの炭素-塩素結合を開裂してトリフェニルメチル陽イオン色素を,また(2)1,1,3-トリメチルスピロ[インドリン-2,3'-[6]-ナフト[2,1-b]ピラン]の炭素-酸素結合を開裂して対応するメロシアニン色素を生成した.生成した色素の可視部吸収帯の吸光度を指標にしてアルカリ金属イオンのLewis酸性を評価し,荷電数及びイオン半径と関連させて考察した. 3.ジクロロメタン中で金属ホウ素アート錯体塩が誘起する2,4,4',6-テトラメトキシアゾベンゼンのハロクロミズム効果による吸収帯シフトはアルカリ金属イオンのLewis酸性についての前項の知見と良好な対応関係が得られた. 4.ジクロロメタン中で2,6-ジフェニル-4-(2,4,6-トリフェニルピリジノ)フェノラートベタインに対して金属ホウ素アート錯体塩が誘起するハロクロミズム効果は高速の速度過程であり,静的な測定ができないためにLewis酸性の定量的評価の指標としての利用は困難であった. 5.溶媒中の微量水分は上記で観測された発色効果に影響を与え,しかも溶媒の種類によってその効果が異なる.従って,金属イオンのLewis酸性の定量的評価には溶媒中の微量水分の精密制御が重要である.
|