研究概要 |
本研究では有機発光素子、とりわけ無機化合物では困難な青色発光素子を開発する目的で、代表的ケイ光性芳香族化合物であるp-ターフェニルのコアの芳香環を縮合複素環で置き換えた化合物を合成し、発光素子としての評価を行った。具体的な成果を以下に箇条書した。 1)3,4-ジアロイル置換ピロール類とシアノメチルアミン及びヒドラジンとの縮合反応により縮合含窒素複素環化合物であるピロロ[3,4-c]ピリジン及びピロロ[3,4-d]ピリダジン類を合成した。前者は強いケイ光を発するのに対し、後者はほとんどケイ光性を示さず、縮合含窒素複 素環の効果が明確に認められた。 2)強ケイ光性のシアノピロロ[3,4-c]ピリジンに4個のパラ置換フェニル基を導入することにより、アモルファス状態を安定化することに成功した。これは、置換基の立体障害のため、分子が平面性を失い結晶化が妨げられたためである。 3)テトラアリール置換シアノピロロ[3,4-c]ピリジンは緑から橙色のケイ光を発するが、ピロール環上の2個のアリール基を除去したジアリール置換シアノピロロ[3,4-c]ピリジンにおいて青色ケイ光を発することに成功した。安定性は未だ不十分であるが、初期の目的である青色ケイ光発光を達成できた。 4)本研究で用いた基本化合物の合成研究中、新規なピロール環形成反応を見出した。また、汎用性の高い、新規な隣接ジアミン合成法を開発した。
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