研究概要 |
本研究は、キラル1,1'-ビナフトール2分子の間を芳香族基2個で上下を架橋した光学活性シクロファン(1)を構築し、その利用について検討を加えるものであり、本研究期間中に、光学活性シクロファン(1)の種々の誘導体の合成、それらを用いた分子認識評価、および光情報記録機能について研究を進め、以下の成果をあげた。 1.光学活性シクロファン(1)の合成 キラル1,1'-ビナフトールとジハロゲン化合物(2)との2:1反応(炭酸カリウム存在)で、第一の架橋体(3)が収率よく生成する。さらに、アセトン中炭酸カリウムまたはDMF中水素化ナトリウム懸濁液に2と3を1:1のモル比で滴下すると、所望の1が高収率で得られた。カルボニル基を導入した1も合成し、この基を利用して1の構造を2個もつダブルキラルシクロファン(4)の合成にも成功した。 2.光学活性シクロファン(1)と種々の分子との相互作用認識 前項で合成したシクロファンを用い、クロロホルム中種々のゲスト分子を加え、旋光度変化により分子間相互作用を観測できることを明らかにした。ダブルキラルシクロファン(4)により認識されるゲストに顕著な構造特異性があり、2個のシクロファン環の相乗効果が観測できた。 3.アゾ基を有する光学活性シクロファンの光情報記録としての利用 光学活性シクロファン(1)としてアゾ基を有する誘導体も合成した。この化合物に紫外線照射すると、アゾ基のトランスからシスへの異性化が起こる。これは大きな旋光度の変化で検知できる。さらに、熱によりもとのトランス体に戻り、旋光度ももとに戻った。このように光情報の可逆的記録が、アゾ基を有する1により旋光度変化の観測で行えることを明らかにした。
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