研究概要 |
1.4-チアゾリジノン類の選択的モノフッ素化とこれを利用する含フッ素β-ラクタム類の新規合成法の開発:4-チアゾリジノン類をフッ化物イオン存在下,陽極酸化するとフッ素原子が硫黄原子とカルボニル基にはさまれた炭素原子上に選択的かつ高効率で導入されることを見出した。これは含硫黄複素環化合物の電解部分フッ素化の最初の成功例であり,本反応はフッ素化剤を用いる化学法に比べ一段と優れていることも分った。得られたフッ素化体からスルホンを経由することによりElフッ素化β-ラクタム類に変換するルートを開発した。本反応は高い生理活性が期待される含フッ素β-ラクタムのユニークな合成法であるがより簡便な電解合成法を次に開発した。 2.含フッ素β-ラクタム類の高効率的電解合成法の開発:α-フェニルスルフェニルβ-ラクタム類をフッ化物イオン存在下,陽極酸化するとフッ素原子が直接β-ラクタム環の3位に選択的に導入されることを見出した。本反応はβ-ラクタム環への電解フッ素化の最初の成功例であり,収率,電流効率ともに極めて高く,通常の化学的方法では本反応は全く進行しないことから電解法が極めて優れていることが分った。なお,本研究に関連して,生理活性が期待される5員環および6員環構造を有するラクタム類の選択的フッ素化にも成功した。 3.含フッ素ステロイド類の新規合成法の開発:陽極フッ素化が進行することは分ったが選択性に欠けることが明らかとなり,今後改良すべき点を検討中である。 4.光学活性含フッ素トレオニンの新規合成法の開発:光学活性トリフルオロ乳酸アルデヒド等価体の電解合成に成功したので今後相応するアミノ酸へ誘導する予定である。 以上のように所期の目的をほぼ完成できた。
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