研究概要 |
トリフルオロメタンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸の両者の存在下で,ベンゼン,トルエン,エチルベンゼン,クメン,o-,m-,及びp-キシレン,メシチレン,ビフェニル及びナフタレンはアジ化水素によって高收率で一般階にアミノ化された。アミノ化が困難と考えられるアニソール誘導体,フェノール,デュレン,イソデュレン及びフェナントレンも上記と同様の方法によりかなり良好な收率でアミノ化出来た。さらに,クロロベンゼンやブロモベンゼンの様な比較的求電子攻撃を受けにくい芳香族化合物も同様にアミノ化された。これらのアミノ化反応の特徴は,ジアミノ化は起こらずにモノアミノ化のみ起こること,アミノ化はオルト-パラ配向性で起きること,及びオルト:パラ比が通常のニトロ化と同様の立体効果を受けること等である。 機構的研究から,これらの反応はアジ化水素の共役酸への芳香族化合物の攻撃とその共役酸からの脱窒素が協奏的に起こって進行していることが判明した。 アジ化水素の代わりにアルキルアジドの一つであるブチルアジドを用いて,ベンゼンやメシチレンなどの芳香族化合物の一段階N-ブチルアミノ化を行なったところ,目的とするN-ブチルアリールアミンが低收率でしか得られずに,ブチルナイトレニウムイオン中間体のす速い転位を経てブタナールが優先的に生成した。ブチルアジドの代わりにt-ブチルアジドを使ったが,t-ブチルアリールアミンは得られず,t-ブチルナイトレニウムイオン中間体から敏速なメチルアニオンの転位を経由してアセトンが生成した。上記のアジ化水素との反応で芳香族化合物としてアルキルフェニルスルフィドを使った場合,相当するアミノ化合物は得られずにこれらスルフィドの芳香核がフェニルチオ化された化合物が高收率で得られた。この反応について現在詳細に研究中である。
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