研究概要 |
本研究では報告者らが自ら見い出したパラジウム-イソシアニド触媒系を用いてテトラシラフルバレンの基本骨格となる1,1,2,2-テトラシリルエチレン骨格の構築を試みた。ところが予期に反して、通常の加熱条件では全く目的生成物が得られなかった。そこで各種検討したところ、1万気圧の高圧下で140゚Cに加熱するとビスシリル化反応が進行し、1,1,2,2-テトラシリルエチレン誘導体1__〜が得られた。次に1__〜の物性について検討した。まず1__〜の単結晶X線構造解析を行ったところ、炭素-炭素二重結合に結合している4つのケイ素原子がいずれもほぼ二重結合平面上にあることがわかった。この結果は桜井らによって報告されている非環状の1,1,2,2-テトラシリルエチレン誘導体がいわゆるねじれた構造をしていることと好対照をなしており興味深い。続いて1__〜の紫外吸収スペクトルを測定した結果、360nmに吸収極大(ε160)を示した。この値は非環状誘導体の吸収(370nm)と近似している。そこでこの遷移についてさらに知見を得るために、ケイ素原子を介して炭素-炭素二重結合が共役している化合物2__〜を同様な径路により合成し、この紫外収吸スペクトルを測定したが、吸収極大波長に大きな変化は勧測されなかった。現在、1__〜にもう一つの五員環骨格を組み入れてテトラシラフルバレン骨格を構築する合成経路について検討を行っている。
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