研究概要 |
1.1-クロロ-2,4-アルカンジオンのパン酵母還元にたいする添加物の効果-還元生成物である1-クロロ-2-ヒドロキシ-4-アルカノンの立体配置はRまたはSであり純度は20〜80%eeであるが,この反応液にSrCl_2を2M濃度で加えるとR体の選択性が大幅に増大することがわかった。他の金属塩でも効果はやや劣るものの同様な選択性の向上が見られた。これは複数の酵素にたいして金属塩が選択的に活性化あるいは阻害を行っていることを示すものと考えられる。エナンチオマーの作り分けの方法として有用である。 2.1-アセトキシ-2,4-アルカンジオンのパン酵母還元 1-アセトキシ-2-アルカノンの還元と同様,S配置の2-ヒドロキシ体を生成した。しかし純度はやや低下し40〜90%eeとなった。4位のオキソ基の効果である。しかし,アセトキシ基の加水分解は全く見られず,4位のオキソ基が加水分解酵素の作用を阻害しているものと考えられる。この反応の生成物は3官能性のキラルシントンとして有用であるので,さらに%eeを向上させる方法を開発することが必要である。 3.パン酵母無細胞抽出液を用いる高効率不斉還元 この方法は,抽出液に適量のグルコースと触媒量のNADPHを加えるだけで反応を進行させることができるものである。これを1-アセトキシ-2-アルカノンの還元に適用すると,収率の向上が見られた。 NADPHの再生は,液中に残存する再生酵素系の作用によるものと考えることができ,簡便な方法であるといえる。この方法を上述のジケトン類の不斉還元に適用することにより,収率,光学純度の向上が期待できる。
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