塗布型磁気記録媒体の塗布工程において、磁性塗料の分散・凝集は重要な問題であり、学術的にも興味ある問題を提供する。本研究では磁気的異方性を持った粒子の凝集構造とレオロジー的性質との関係をクリープ挙動の観点から検討した。特に降伏値レベルでのクリープ挙動を精度よく測定するため、磁場を印加した際の凝集構造の変化とクリープ挙動の変化を対応させて検討するために独特なクリープメータを試作した。特にエアーベアリングの使用、レーザ式変位計の装着、電磁石の取付け等が本装置を機能的なものにしている。 本年度は特に磁性粒子と非磁性粒子の分散系について、種々の応力および流動履歴の下でのクリープ挙動を測定した。サンプルとしてはγ酸化鉄およびα酸化鉄のシリコンオイル分散系を用いた。 その結果、いわゆる磁性分散系では極めて顕著な擬塑性流動が観測され、明確な降伏値が存在する一方、降伏値以下の応力下において不可逆的な独特な変形を示すことがクリープ測定から明らかになった。これは磁性粒子の形成する3次元凝集構造の特集性によって説明することができる。一般に磁性粒子は流動停止後、比較的短時間のうちに、そのせん断速度に応じた嵩高い凝集網目を形成し、これが時間と共に収縮してゆくことが、流動停止後の静置時間を変化させて測定したクリープコンプライアンスの時間依存性から明らかになった。また収縮した凝集網目が破壊する前に多少膨張するのが、降伏値近辺の応力の下で見られる独特な不可逆変形と関係あることもわかった。これらの事実は非磁性分散系との比較によって明らかになったものである。 本研究の成果は応用力学連合の国際会議で報告され、近い将来に“Journal of Rheology"に発表される予定である。さらに今後は磁場印加の下でのクリープ挙動について検討する予定である。
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