研究概要 |
化学組成の異なる二つのモノマー、A,Bからなるコポリマーの例として、スチレン/メタクリル酸メチル系をとりあげた。この系の統計的コポリマー、等モル組成のブロック及び完全交互コポリマー、及びそれぞれのホモポリマーについて、以下の事柄を検討した。各試料の分子特性化を行なった後、DSC測定から得られたサーモグラムをエンタルピー曲線に変換し、操作条件に依存しないガラス転移温度Tgを決定した。得られたコポリマーのTgは、試料の化学組成Mに依存するのみならず、モノマーの配列様式すなわち一次構造にも依存した。一次構造を表わすパラメータとして、ランナンバーRを用いると、TgのM依存性とR依存性は分離できることがわかった。これは、AA,BB,ABという三つのダイアッドでコポリマーを表わすモデルにより、実測のTgは定量的に記述できることを意味する。 この考えを、ホモポリマーであるポリメタクリル酸メチルに適用し、そのTgの立体規則性依存性を検討した。立体規則性ポリマーは、立体化学的にはメソmとラセモrからなるコポリマーと考えられるので、三つの連鎖、mm,rr,mrを指定すれば、Tgは決まる。この推測を実験データにより確認した。ただし、通常のコポリマーは一組のモノマー反応性比により、全組成の試料が規制されるのに対し、立体規則性ポリマーは重合法を変えて規則性度の異なる試料を調製するので、反応機構が同一でない点が異なる。この点を認識すると、これまで解決されずにきた、Tgの立体規則性依存性の問題は、明確に解決できた。
|