研究概要 |
本研究の成果を以下に列記する。 1.従来より当研究室に装備されている動的光散乱光度計の散乱光分光器であるファブリペロー干渉計を多重光路化することで散乱光のスペクトル分解能を向上させ,さらにヘリウムの輝線を基準光源としてスペクトル幅の絶対評価が行えるようにした。以上2点の改良により,散乱光の偏光解消成分の強度スペクトルの半値幅ならびに形状を正確に決定でき,光学異方性を有する溶質分子あるいはそれに含まれる原子団の回転緩和時間γ_rが評価できるようになった。本装置を用い,現在アタクチックポリスチレン鎖の局所運動に関する研究を遂行中であり,得られた結果については,第42回高分子討論会(平成5年9月)で発表する予定である。 2.本装置を用いることで,溶質分子のみならず溶媒分子γ_rを評価することができる。高周波極限固有粘度あるいは極低分子量オリゴマーの固有粘度[η]が負となる系では,溶質分子の周りの溶媒分子のγ_rが小さくなるという研究報告があるが,その真偽を確認するため,極低分子量オリゴマーの[η]が負となるポリジメチルシロキサンの臭化シクロヘキサン溶液およびポリイソブチレンのベンゼン溶液の2つの系について,γ_rを測定した。前者の系では溶質分子の添加によりγ_rは小さくなったが,後者の系では検知しうる変化はなく,上の報告結果が一般には成立しないことを明らかにした。この結果については,第42回高分子学会年次大会(平成5年5月)で発表する予定である。
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