研究概要 |
吸着媒としてフィルムなどより比表面積が非常に大きい高分子ミクロスフィア(微粒子)を用いた。疎水性のポリスチレン(PS);親水性のスチレン(St)/アクリルアミド(AAm),St/アクリル酸(AA),St/2‐ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)共重合体の各マイクロスフィアは重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS)を用いて,窒素雰囲気下ソープフリー乳化重合法により合成した。 まず、これら各マイクロスフィアの表面特性を電導度・電位差滴定,ら(ゼータ)電位および粘度測定,電子顕微鏡観察などにより調べた。その結果,各マイクロスフィアは負に荷電し,St/AAmおよびSt/HEMA共重合体粒子表面には非荷電性の親水性高分子層(ヒドロゲル層,それぞれポリ‐AAm層,ポリ‐HEMA層)が存在することがわかった。また、AAm共重合体粒子表面はポリ‐AAm層で均一に被覆されているのに対し、HEMA共重合体粒子はポリ‐HEMAだけでなく、PS部分もその粒子表面にかなり存在する(ミクロドメイン構造を有する)ことも判明した。 続いて、血漿タンパク質(アルブミン,γ‐グロブリン,フィブリノーゲン)のこれらマイクロスフィアへの単独および競争吸着性を検討した。単独吸着では、各タンパク質ともその吸着性は媒質のpHやイオン強度,マイクロスフィアの表面特性に大きく依存することが明らかとなった。一方,これらタンパク質混合溶液からの疎水性PSマイクロスフィアへの競争吸着においては,分子量および疎水性の大きいフィブリノーゲン分子が優先吸着する結果となった。ヒドロゲル層を有する親水性共重合体マイクロスフィアへもフィブリノーゲンの優先吸着が認められたものの、各タンパク質ともその吸着性はPSに比べ大きく低下した。これらの結果は,生医学材料(バイオマテリアル)を改良・開発する際に重要な知見となるものである。
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