本研究は、外部環境の微小な変化に対して体積相転移を誘起するハイドロゲルを、ミクロンオーダーの超微小電極に化学的に固定し、環境変化という情報(特に化学情報)をハイドロゲルの相転移という現象を通して、電気化学的に電気信号に変換するシステムを創製することを目的とし展開された。すなわち、レドックス分子の溶液中にゲル修飾電極を浸して電気化学測定をする事によって、ゲル中レドックス分子の濃度、拡散係数の独立決定を可能にした。ゲルの体積相転移を含む膨潤度変化に、このレドックス分子の濃度、拡散係数は、極めて鋭敏で検出電流値に反映された。また、この測定は、平衡膨潤時のみならず、膨潤変化過程においても可能であるため、膨潤→収縮あるいは収縮→膨潤といった非平衡時のゲルに生起する現象の空間的不均一さを解析することが可能となった。ポリアクリルアミドおよびポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)ゲルを用いた研究の具体的成果を以下に示す。 1)微小電極上へのハイドロゲルの化学的固定法を確立した。 2)ゲル修飾電極をレドックス分子を溶解した溶液中に浸漬し、膨潤あるいは収縮時のゲル中への分子の分配、ゲル中での分子の拡散係数の電気化学的独立決定(平衡時)を実現した。 3)膨潤(〕 SY.dblharw. 〔)収縮(非平衡時)の動的過程を、電解電流の時間依存性から検討し、この過程に対するゲルサイズ効果、膨潤/収縮の駆動力となる化学ポテンシャル差の影響を明らかにした。また円盤電極を空間的に多数配列させた電極系を作成し、この動的な過程の空間的不均一さを、複数の電極を同時にその場測定する事により明らかに出来ることを見いだした。 以上の検討によって、本研究の目的である、超微小電極を用いたハイドロゲルの膨潤・収縮挙動の静的および動的解析、さらに環境変化という情報をハイドロゲルの相転移という現象を通して、電気化学的に電気信号に変換するシステムの創製を達成した。
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