研究概要 |
炭素系吸着剤および合成吸着剤における有機化合物の低濃度水溶液中での吸着相互作用を分子軌道法に基づき検討した.電荷移動相互作用から得られる相互作用エネルギーを指標とすれば,液相吸着の親和係数が相関できることが明らかとなった.また,吸着剤の表面改質において相互作用エネルギーが吸脱着特性の重要な指標となることもわかった. 1.液相吸着データベースの構築 (1)活性炭,合成吸着剤において,電子供与性置換基を有する芳香族化合物の吸着量は大きく,電子吸引性置換基をもつ場合の吸着量は小さいことが判明した. (2)活性炭においては,電子供与性の置換基をもつ芳香族化合物は吸脱着の顕著な履歴を示し,電子吸引性の置換基を有する化合物は吸脱着の履歴が全く見受けられなかった.合成吸着剤においては,全ての吸着質に対して吸脱着の履歴は生じなかった. 2.液相吸着親和係数の相関 (1)活性炭,合成吸着剤における吸着相互作用を分子軌道の混合と考え,半経験的分子軌道法とフロンティア軌道理論を用いて吸着特性の指標となる相互作用エネルギーの評価法を提案した. (2)液相吸着平衡にD-R式を適用して得られた親和係数が吸着相互作用エネルギーにより相関できることを示し,液相吸着平衡の推定法を提案した. 3.液相吸脱着特性に及ぼす表面改質効果 (1)活性炭やグラファイトに酸化処理を施せば液相吸着量は減少するが,脱着特性を大きく向上させることが可能であり,液相吸脱着特性に及ぼす表面酸素官能基の影響を吸着相互作用エネルギーの変化によって定性的に説明できることがわかった. (2)合成吸着剤における液相吸着量を増加させるには,電子吸引性の置換基を修飾すればよいが,吸脱着の履歴が発現する可能性があることが示された.
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