研究概要 |
現在,冷媒,作動熱媒体として汎用されている塩素系フロンHCFC-22(CHCIF_2)は21世紀の早い時期にその使用,製造が中止されることが決定している。これに代わる新たな純熱媒体はなく,その開発が国際的に緊急課題となっている。本研究は,塩素を含まないフロン(Hydro-Fluoro-Carbons,HFCs,非塩素フロン)混合系:[1]HFC-23(CHF_3)+HFC-134a(CF_3-CH_2F),[2]HFC-32(CH_2F_2)+HFC-134a(CF_3-CH_2F)液相中の熱物性(蒸気圧,音速,PVT)を調べ,HFC-22の代替え混合フロン媒体を見いだすことを目的として平成4年,5年の2年間実施された。 純物質HFC-23,HFC-32,HFC-134aおよび混合系[1],[2]中の蒸気圧,音速,PVTを種々濃度について測定し,温度・圧力・濃度依存性について調べた。これら純物質の臨界点(HFC-23:Tc=298.98K,Pc=4.82MPa;HFC-32:Tc=351.56K,Pc=5.83MPa;HFC-134a:Tc=346.25K,Pc=3.811MPa)は大きく異なっている。ハロゲン化炭化水素化合物の熱物性値の絶対値は,蒸気圧-温度曲線,すなわち,臨界値の大きさに対応することが知れている。しかし,得られた結果は物質よって大きく異なることが判った。一方,混合系[1]の蒸気圧,音速は濃度に対して大きく依存する結果を得た。また,系[2]のPVTを含むこれらの値は濃度変化に伴ってほぼ直線関係を示しながら変化した。この系のHFC-32の高濃度領域において諸熱物性値がHCFC-22の性質にもっとも近いことが判明した。これら媒体の双極子能率は大きく,得られた結果の温度・圧力・濃度依存性にも強い分子間相互作用が関与していることを示唆した。このようにして得られた本研究の成果は,今日,もっとも緊急を要するHCFC-22に代わる混合冷媒あるいは作動熱媒体を開発するための重要な基礎情報になると確信する。今後,これらの系,あるいは他の混合系について,諸性質の温度・圧力効果,特に,それらの濃度依存性についてさらに詳細な研究が必要である。
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