研究概要 |
生理活性を持つ生体高分子が,その機能を発揮する上において,生来の立体構造がとれる環境と分子間の凝集という物理的な現象が発生する条件が競合する,本研究では,生理活性物質の凝集と晶析における核発生の前駆段階との類似性に着目し,凝集の防止が必要な変性タンパク質のリフォルディング効率の改善と積極的に利用する分離・精製技術の開発の両面から工学的検討を行った.その結果,次のような知見を得た. 1.分子量の類似した物質,パパイン(分子量23,400)とデキストラン(分子量19,600)の混合水溶液に硫酸アンモニウムを添加することで,パパインについて塩溶および塩析状態を作り出し,見かけ上,大きさを変化させ,限外ろ過法で,前者を阻止側に高収率で回収したり,後者を透過側に分離することができた. 低分子である各種のアミノ酸を界面活性剤のミセルと疎水性および電気的結合力で結合し,限外ろ過が可能な大きさにすることで,限外ろ過法で濃縮したり,アミノ酸の種類に依存する結合力の差を利用して,アミノ酸どうしを限外ろ過法にて,高速で大量の分離が行える方法を開発した. 2.変性リゾチームをモデル物質に用いて,リフォルディング効率の向上を目的に環境条件および変性タンパク質と再活性化溶液との混合方法および荷電による凝集の防止について検討したところ,凝集を防止の効果もある変性剤をタンパク質に結合したまま再活性化溶液中に分散できる条件を作り出すことで,従来より高いタンパク質濃度でも,再活性化効率を高くすることが可能であることがわかった.弱い荷電も効果があった.
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