モザイク荷電膜は1枚の膜中にサブミクロンのオーダーで陰イオン交換領域、陽イオン交換領域および中性領域を合わせ持つ構造のために、外部から電場を印加することなしに、膜を挟んだ両側の電解質の濃度差あるいは圧力差によってイオンの透過が可能となり、電解質と非電解質の分離に極めて有効である。 本研究で使用されるモザイク荷電膜は、poly(isoprene-b-styrene-butadiene-b-(4-vinylbenzyl)dimethylamine-b-isoprene)の4成分5元ブロック共重合体をリビングアニオン重合により合成し、ついでキャスティング法により製膜した後、p(4-vinylbenzyl)dimethylamine部分を4級化することにより陰イオン交換領域とし、p-diene部分を架橋し、p-styrene部分をスルホン化することにより陽イオン交換領域とすることにより調製された。 本研究においては、著者らの作成したモザイク荷電膜を圧透析操作に利用して、電解質と非電解質の分離が透析操作と同じように可能であるかを検討した。 圧透析実験には、回分式および連続式の圧透析試験用セルを使用し、食塩等のイオンの定量はイオンクロマトグラフィーを用い、ショ糖等の非電解質の定量は高速液体クロマトグラフィーを用いた。 食塩およびショ糖の混合水溶液の圧透析実験を行い、溶質流および体積流を測定し、加えた圧力による溶質流と体積流の変動を考察した。また、電解質物質の濃縮率を計算し、最適圧力を見いだした。 非平衝熱力学から誘導されたケデム・カルチャルスキーの理論式に実験で得た溶質流と体積流のデータを当てはめることにより、理論式の妥当性を検討した。
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