研究概要 |
莢実の呼吸速度(CO_2放出速度)は,一定温度下において生育期間を通してほぼ一定であること,Q_<10>は1.8程度であること,そして,莢と子実において差異がないことが明かとなった.また,以下に述べる貯蔵物質蓄積が,完全に終了する時期まで呼吸活性は高く維持されること,莢実が茶化開始すると直ちに急減することが確認され,呼吸過程が莢実の成長停止の原因ではないことが明かとなった. 子実の成長速度には,気象条件の大きな差にも関わらず,年次間差異は認められなかった.莢実中の貯蔵物質である油脂とタンパク質の蓄積は,乾物の蓄積とほぼ同様な傾向を示し,直線的に増加した後,莢実の黄化開始後数日間経過後に停止した.貯蔵物質蓄積停止は莢の黄化開始後であることから,これらの物質蓄積停止は,莢の成長停止を規定しているわけではないと考えられた. 貯蔵物質を合成するための,いわば材料である糖・デンプンおよび無機・アミノ酸態窒素含量に関しては,特に糖含量の変動には大きな年次間差異が認められ,黄化開始期においても,大量の余剰が認められる場合があった.さらに,糖が余剰に存在するにも関わらず,デンプンの分解が既に登熟中期に始まっていることも確認された.このことは,糖含量は必ずしも子実の成長停止に関与しないが,デンプンの分解は成長停止に何らかの関わりを持つことを示唆している.また,無機・アミノ酸態窒素に関しては,子実中のプールサイズは非常に小さいことから,莢中の含量が子実内のタンパク合成・代謝に影響すると考えられた.莢中の含量は生育に伴って減少するが,減少程度に年次間差異がみられ,減少が遅い年には黄化が遅れることが明らかとなった. 以上より,莢実の成長停止時期を決定する要因には,デンプンの分解と莢中の無機・アミノ酸態窒素プールの大きさが関与していることが示唆された.
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