研究概要 |
1 植物生活環の進行において,CO_2が調節的役割を有する可能性があるかどうかを検討するためにバーナリゼーションに対するCO_2の影響を調べた。 2 ダイコンの種子バーナリゼーションの程度は,低温処理中のCO_2濃度の増加にしたがい低下し,CO_2が種子バーナリゼーションの抑制作用を有することが明らかとなった。この効果はバーナリゼーション処理中の植物体成長を制限した水ストレス条件下においても維持されたことから,CO_2による成長抑制とは独立した作用であると考えられた。 3 CO_2のバーナリゼーション抑制作用は,未発芽吸水種子または緑植物体についても発現し,本研究の結果が,野性植物の埋土種子や緑植物バーナリゼーション型の園芸植物に対しても演繹できる可能性が示された。 4 CO_2の種子バーナリゼーション抑制作用は,NBDあるいはウニコナゾールなどのバーナリゼーション抑制効果をもつ要因と相乗的であり,ガス環境を調節することにより,低温貯蔵苗のバーナリゼーション進行を制御しうる可能性が考えられた。 5 夏生の1,2年生植物であるヒメムカヒヨモギが,1年生としての開花周性を発現するためには,埋土種子の冬季における低温遭遇が必要であった。これは,2年生から1年生への植物の生活史進化において,未発芽段階での種子バーナリゼーションが重要な要因であることを示唆している。
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