研究概要 |
本研究は、フッ素樹脂フィルム(ネオフロンフィルム)で作製した封筒型培養容器“Culture Bag"(CB)を用いたテッポウユリの子球生産について検討したものである。 まず、MS寒天培地で増殖された無菌子球からりん片を分離し、このりん片を種々の厚さのPFAおよびFEPフィルムで作製した小型CB(90×40mm,1/2MS液体培地12ml)あたり3枚植え付け、開口部を熱接着して密封した。これらの小型CB内のりん片からの子球形成を、フラスコ(FL;寒天培地36ml,9りん片)のそれと比較した。その結果、いずれのCBでも、従来法のFLに比べ著しく大きな子球が得られた。また、子球の葉身部が、FLに比べCBで極端に短くなった。この場合、薄いフィルムのCBほど、またFEPに比べPFAフィルムのCBで、それぞれ葉身数が減少し、りん片が密着したより正常な子球が得られた。MS培地でも同様の結果が得られたが、1/2MS培地に比べ、子球重は著しく増大した。 次に、この子球生産システムを実際の種苗生産に用いることを前提にして、小型CBを9倍にスケールアップした大型CB(270×120mm)を試作し、りん片培養を行った。その結果、大型CBにおいても、従来法に比べ、葉身部が短い大きな子球が得られることが示された。さらに、培養空間を有効に利用するために、多室大型CBをつり下げて用いたところ、根の分化の少ない大きな子球が効率よく生産できることが明らかとなった。 以上の結果、テッポウユリの子球生産システムとしてCBが優れた実用性、すなわち、(1)葉身部と根が短い大きな子球が得られる、(2)子球を傷つけずに容易にCBから取り出せる、(3)大型CBではりん片の植え付けが容易になる、(4)タンク培養などに比べ、子球の生産コストが著しく低くなる、などをもつことが示された。
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