研究概要 |
1.ホスファチジルセリン(PS)の合成について (a)phosphatidylserine synthase(PSS)の部分的欠失あるいはアミノ酸置換変異株を作成した.これによってPSSの構造上の小胞体結合などの機能領域の解析が可能となった. (b)PSSの細胞内分布とその分布に必要な構造を検討するうえで、本酵素に対する抗体は非常に有用である.そこで本酵素をコードする遺伝子CHO1をglutathione S-transferase(GST)遺伝子と結合して大腸菌で発現させることにより,従来不可能であった大腸菌におけるPSSの大量増幅を実現し,GSTを利用して精製してから兎に注射して特異的抗血清を得た.また,PSSのアミノ末端の役割を解析するためにその約60アミノ酸領域を同様にして増幅精製し,抗血清を得た. 2.ホスファチジルエタノールアミン(PE)の合成について (a)CTP:ethanolaminephosphate cytidylyltransferase(ECT)の活性が低下した酵母変異株を分離し,この変異を相補する酵母DNAクローンをクローン化した.ついで変異相補領域を約3kbに限定した. (b)ECT活性変異を相補するDNA上にある遺伝子ECT1の構造を分析した.その結果,ECT1の読み枠は972bpで,323アミノ酸(推定分子量36,888)のタンパク質をコードするものであることが判明した.配列中136アミノ酸残基に相当する部分は類似の反応を行う,酵母およびマウスのCTP:cholinephosphate cytidylyltransferaseをコードするDNAと約50残基の位置が一致した.また,ECT1を大腸菌を発現させたところ,本来大腸菌にはないECT活性が検出されたので,ECT1はECTの触媒サブユニットであると結論した. (c)大腸菌で増幅されたECT蛋白を精製し、兎に投与してECTを特異的に認識する抗血清を調製した.これによってECTの酵母細胞内における分布の分析中が可能となった.
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