研究概要 |
本邦沿岸海域よりグラム陰性好気性周毛桿菌81株を分離し,保存機関より分譲を受けた類似菌株18株,計99株について分類学的研究を行った。検討形質は,綱〜科レベルで有効な形質として,電子伝達系キノン分子種・菌体脂肪酸組成・リボソームRNAの相同性・16SリボソームRNAの部分塩基配列を,属以下のレベルで有効な形質として形態・生理・生化学的形質とその数値分類学的処理およびDNAの相同性を採用した。本研究の対象菌株は,大きくグループ(1),(2),(3),およびPM-4株に分けられた。グループ(1)(56株)は既知のDeleya属に相当し,既知種の他に新たに2新種1組合せ(D.japonica,D.agilis,D.aquamarina)を明らかにした。またこれまで“Achromobacter"属に同定されていた3菌株も本属の新種(D.turbida,D.tenuis)であると結論した。グループ(2)(7株)は,周鞭毛の他に極鞭毛も有し,極鞭毛を持つとされているAlteromonas属に分類されるべきと結論した。さらに,種の検討より4新種(A.litoralis,A.brevis,A.atlantica,A.carrageenovora)を明らかにした。グループ(3)(35株)は全くこれまでに記載のない菌群で,しかも科〜属レベルでかなり分類学的に異なる菌株を含んでいた。本グループの菌株について,少なくとも2新属3新種(Zobellia subtoropicalis,Z.nishinoshimaensis,Oceanobacterium insulare)をProteobacteria綱 rRNA superfamily IVに含まれる新分類群として記載するべきと結論した。PM-4株は非常に特異なキノン系(ユビキノン-11)を持つことから少なくとも新属新種(Salinomonas feraxa)とすべきと結論した。本菌の系統的位置はユビキノン-9を持つ陸性菌Acinetobacter属に隣接することも明らかにした。 本研究によりグラム陰性好気性海洋細菌の主要属の迅速・確実な同定が、化学分類学的手法によりほぼ可能になった。
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