研究概要 |
シグマ因子は原核生物細胞における、転写開始因子であると同時に転写制御因子でもあり、原核細胞における遺伝子発現とその制御において最も重要な働きを担っている。先に代表者らは、真正細菌群の多くが2個以上のrpoD相同遺伝子(主要シグマ因子としての共通骨格構造をもつ蛋白質をコードする遺伝子)を持つことを示した。特に大腸菌の第二のrpoD遺伝子であるkatF(ropS)の遺伝子産物が定常的に特異的に働くシグマ因子であることをin vitroの転写系を用いて証明した。 単細胞性藍藻類の一種であるSynechococcus PCC7942株は、4種の主要シグマ因子相同遺伝子、rpoD1,rpoD2,rpoD3,rpoD4を持っている。これらの遺伝子群の生物機能と発現制御についての解析を行った。Synechococcus PCC7942株よりRNAポリメラーゼを精製し、BioRex70カラムを用いてホロ酵素とコア酵素が分離できることを明らかにした。また、精製ホロ酵素より単離された52kDの蛋白質のN-末端近傍のアミノ酸配列の決定を行った結果、rpoD1遺伝子塩基配列から予想されるポリペプチドのアミノ酸配列と一致した。一方、rpoD1〜rpoD4について大腸菌を用いた大量発現系の構築とそれぞれの遺伝子産物の分離・精製を試みrpoD1,rpoD3,rpoD4について大量発現に成功した。rpoD1遺伝子産物は52kDの蛋白質であることが確認されるとともに精製したSynechococcusPCC7942株のコアRNAポリメラーゼに添加することによって特異的転写開始を促進することが示された。ホロ酵素より分離された52kD蛋白質はrpoD1遺伝子によってコードされるシグマ因子であると結論した。大腸菌系を用いて分離精製したRpoD1.RpoD3,RPOD4を用いて抗体の作成を行った。RNaseプロテクション法を用いてそれぞれの遺伝子の発現を調べた。またそれぞれの構造遺伝子部分にTn5を挿入したクローンにより遺伝子破壊実験を行った。
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