研究概要 |
L-ソルボースによるセルラーゼの誘導生成がどの様な機構によって起こるかを解明することを目的として,T.reeseiの親株(QM9414)および変異株(PC-3-7)の洗浄菌糸を用いてセルラーゼの誘導について検討した。 1.L-ソルボースのセルラーゼ誘導生成の詳細な検討 L-ソルボースは強力なインデューサーであるソホロースと同程度のセルラーゼを誘導するが,その必要濃度は高く誘導開始時期も遅かった。また,用いる菌糸の生育時期によりソホロースの誘導能はほとんど変らないのに対し,L-ソルボースでは対数増殖期に誘導能が大きく低下した。これは吸収されたL-ソルボースが代謝されるためと推察された。 L-ソルボースとソホロースの同時添加効果が低濃度で認められるとともに,L-ソルボース単独では誘導能のない条件でソホロース添加による相乗効果も認められた。また,L-ソルボースのセルラーゼ誘導はグルコース抑制を受け,その感受性はソホロースの場合よりも高かった。 2.誘導される酵素類の分析 L-ソルボースはセルラーゼと同様キシラナーゼをも誘導し,その誘導能はキシラナーゼの特異的インデューサーであるキシロオリゴマーと同程度でありソホロースの約2倍であった。さらに,ソホロースではほとんど誘導できない特定のキシラナーゼ(19kDa)を誘導していた。 3.L-ソルボースの代謝とセルラーゼ誘導能 L-ソルボースの代謝経路にあると推定される物質はセルラーゼを誘導せず,グルコースを含めたこれら物質の低濃度での逐次添加においても誘導は起こらなかった。 以上のことより,T.reeseiにおけるL-ソルボースによるセルラーゼの誘導はデリプレッションではないものの既知のインデューサーであるソホロースとは異なる機構によるものと推察された。
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