研究概要 |
グアムの中毒発生から約一か月後に採集されたカタオゴノリを入手し、脂溶性区から、ポリカバノシドA(400μg),B(200μg),C(100μg)の3種のマウス致死成分を単離した。各成分を各種2D-NMRやMSスペクトルの解析に供し、高度にメチル化またはアセチル化されたフコシルキシロースを糖部とする新奇配糖体であることを明らかにした。アグリコン部はトリエンまたはジエン側鎖、ヘミケタール、エーテル環を含む新奇13員環マクロリド構造を持つと推定した。この毒はマウス腹腔内投与により下痢、けいれん、四肢のれんしゅくを呈した。この症状は中毒患者の症状と類似していたので、ポリカバノシド類が中毒の主原因毒と推定した。また、フコースが、海藻に多く含まれる糖であることから、ポリカバノシド類は海藻自体の生産物と考えられた。中毒発生後約1年間にわたり、同海藻7検体を入手し、毒性試験を行った。事件発生約1か月後の検体では、300-400MU/kg(IMU:マウス1匹を殺す毒量)の毒性を示し、脂溶性毒が主体であったが、2か月後では全毒量が200-300MU/kgで約50%が水溶性毒であった。その後は、毒量が約150-200MU/kgに低下し、水溶性毒が主体であったが、その本体は明かでなかった。また、鹿児島産のツルシラモでも約100MU/kgの水溶性毒が検出された。また、ポリカバノシドの構造は関連代謝物が、糖の発色試薬であるオルシノール硫酸で発色し、かつ、溶血活性を示すことを示唆している。そこでそれらの検出手段により、事件後約1年の検体の脂溶性区について代謝物の検索を行ったが、ポリカバノシド類関連化合物は発見されなかった。一方、カタオゴノリの主な溶血成分として、O-α-D-galactpyranosyl-(1-6)-O-β-D-galactopyranosyl-3'-O-hexadecanoylglycerolと1'-O-(6-sulfo-α-quinovosyl)-3'-O-hexadecanoylglycerolと同定した。
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