研究概要 |
カロテノイドは脂質過酸化反応に対して抗酸化作用を有し、その作用機序はカロテノイドが脂質フリーラジカルを捕捉してフリーラジカル連鎖反応を停止させることによると考えられている。本研究はβ-カロテンと脂質フリーラジカルの反応生成物を検討することによって、カロテノイドのフリーラジカル捕捉反応機構を明らかにすることを目的とした。まず、β-カロテンとフリーラジカル反応開始剤(AMVN)より生じさせたアルキルペルオキシラジカルのベンゼン溶液中での反応生成物として、新規化合物6種を含む7化合物の構造を12-formyl-11-nor-β,β-carotene(1),15'-formyl-15-nor-β,β-carotene(2),19-oxomethyl-10-nor-β,β-carotene(3),5,6-epoxy-5,6-dihydro-β,β-carotene(4),13,15'-epoxyvinyleno-13,15'-dihydro-β,β-carotene(5),15',13-epoxyvinyleno-13,15'-dihydro-β,β-carotene(6),11,15'-cyclo-12,15-epoxy-11,12,15,15'-tetrahydro-β,β-carotene(7)と決定した。次いで、β-カロテンとリノール酸メチルペルオキシラジカルの反応生成物をHPLC分析したところ、化合物1-7に加えてβ-カロテンよりも遅く溶出される位置に新たな化合物8が認められた。化合物8はHPLCで分離してその構造を検討したところ、β-カロテンに少なくとも2分子のリノール酸メチルが酸素原子を介して結合した構造であった。リノール酸メチルの過酸化反応時において、化合物1-8はβ-カロテンの減少にともない生成し、特に化合物8は反応系に多量に蓄積した。以上の研究結果より、β-カロテンは脂質ペルオキシラジカルを直接捕捉することによって脂質過酸化反応を抑制していることが明らかとなった。
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