あらかじめ雨量計、地下水位計、間隙水圧計、伸縮計、孔内傾斜計、歪計、光波測量用移動杭、自然電位用電極が設置された自然斜面に、注水による人工地すべりを発生させ、そのメカニズムを考察した。概要は以下の通りである。 1.地すべりの発生には、間隙水圧とともに地盤強度の低下が寄与している。降伏応力の指数関数的な減少を想定すると、地盤の変形の初期をフォークト物体、それ以降をビンガム流動と仮定して、現象を説明することができる。 2.歪速度γ^^・と間隙水圧μの間には、lnγ^^・=a・u-b(a、bは定数)のような関係が見られる。間隙水圧の変動速度μ^^・と地盤の歪速度γ^^・の関係を線型システムとみなすと、両者のスペクトル比はビンガム・モデルのシステム関数で近似的に表わすことができる。実際には、前項で述べたように地盤強度の低下も絡んでくるため、上記のγ^^・-μ関係式のような非線型を示す。 3.地すべり地内外に2〜4m間隙でほぼ格子状に配置した杭の移動を、光波セオドライトを用いて繰り返し測量した。そのデータに二次元有限均一歪理論を適用して、地表面の水平歪の分布と経時変化を求めた結果、この方法は地すべりの局所的な変動の検出や予測に非常に有効であることが明らかになった。 4.地すべりの前兆現象の一つとして自然電位の観測を行った。地下水の流れあるいは地盤の変形と自然電位の経時的な変化の間には、明暸な関係が認められなかったため、より規模の大きいかつ現在活動的な島原市眉山一帯で測定を繰り返した。その結果、地下水の面的な分布と流動、ある特定地点における経時変化を観測したが、それらの確認と地盤内の他の現象との対応については、今後の課題として残った。
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