研究概要 |
ロータリーレースによって切削された単板に生ずる種々の欠点は原木,工具,切削条件および加工機械の精度に係わる諸要因が相互に複雑に影響し,複合作用することに起因している。 しかし,ロータリーレースのオペレータは長年の日常業務を通して蓄積した経験的専門知識や勘を基に,単板における欠点発生の複雑なメカニズムの中から直感的判断を行い,その主たる原因を瞬時に見極め,直ちに対応策を構じる。 本研究では,このような熟練作業者が蓄えている経験的専門知識,ノウハウあるいは勘などの潜在的重要性を認識し,いま剥かれた単板にある種の欠点が認められたがその原因が不明である場合,ユーザーとの対話の繰り返しによって,経験的専門知識を基にした判断がある特定の答え(単板に発生した欠点の原因)に収斂する原因診断システムの構築を図った。このことにより,技術的経験の長短にかかわらず,いかなる生産の状況下にあっても,単板に種々の欠点が発生したならば,的確にその原因の究明と対応処置が可能となった。 1.経験的専門知識の収集 a.単板切削に関する内外の既往の文献から,単板に発生する諸欠点として18項目を,それらの原因として56項目をについて検索した結果に基づいてアンケート調査票を作成し,日本合板工業組合連合会に加盟する105企業・123工場のレース・オペレータに対してアンケート調査を行った。 b.個々の原因によって単板欠点の発生する可能性(確立)を直観的に判断してもらい,百分率にて回答を求めた。それぞれの単板欠点とその原因について,「単板欠点の発生確率と回答率」とから欠点発生の信頼度を算出した。 2.ファジィ・エキスパトシステムの構築 a.専門家が長期間にわたって蓄積した経験的専門知識や勘をコンピュータに移植し,専門家でない人間が専門家と同等の知識水準で,木材工学における諸問題の解決を図ることを可能とするエキスパートシステムによる支援システムを開発した。 3.現場における単板のエキスパート推論の実証とその信頼性の評価 a.本研究におけるアンケート調査に対する回答企業および非回答企業のなかから数社を選び,構築した本推論システムによる推論の信頼性について生産稼働時に現場での検証を行った。
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