研究概要 |
この研究では,木材中に圧電性や誘電性に特徴のあるセラミックスを析出させ,木材とセラミックスの物理的な複合によって木材の電気特性を改良することと,木質材料とセラミックスを混合した後に炭化処理を施し,木質炭化焼成材の電気的性質や物理特性を制御することを目的をした。 木材中へのセラミックスの析出には,金属アルコキシドを用いた。溶液状態で浸透させ,加水分解によってチタン酸ナマリとジルコン酸ナマリを析出させるゾル-ゲル法を適用した。また,炭化焼成材には添加物として,水ガラスおよびシラスバルーンを加えた。木粉と添加剤および粉末接着剤を混合して熱圧成形したボードを500゚Cと800゚Cで炭化処理した。 木材中へのセラミックスの析出には成功したが,木材の熱分解を抑えるためにエージング温度が十分でなかったので,木材-セラミックス複合材の圧電・誘電特性を改善するには至らなかった。炭化材の固有抵抗は焼成温度に依存し,500゚Cの焼成では1MΩ・cm以上,800゚Cの焼成では1Ω・cm以下となった。また,5%の水ガラス添加によって1kΩ・cm以上となり,わずかな添加で固有抵抗を制御できることがわかった。シラスバルーン添加では,添加率40%で1MΩ・cmとなり,10^6以上のレンジにわたる変化があった。熱伝導率は,0.1〜0.2W・m^<-1>・K^<-1>で,同程度の密度を有する木材とほぼ同じ値となった。 今後の課題として,電気・磁気特性を有するセラミックス粉末と木粉との混合体の二次炭化焼成が,セラミックスの特性を取り込む上で有効と考えられる。
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