研究概要 |
本研究課題は、天然高分子多糖としてのセルロース素材を化学的に改質して、特異な機能を付与したセルロース誘導体に変換することを意図して実施してきた研究である。本年度を最終年度として研究課題に関連して実施してきた研究内容は以下のようにまとめることができる。まず膨潤、非晶化などによる反応し易くするための活性化前処理した市販のセルロース粉末を過ヨウ素酸試薬で酸化して、反応性アルデヒド基を分子内に生成したジアルデヒドセルロースを調製した。この際に過ヨウ素酸試薬の添加量を制御して酸化し、酸化の程度の異なる生成物を調製した。そしてジアルデヒドセルロースより二つの型の含ちっ素セルロース誘導体を調製し、これらの特性について検討した。まずジアルデヒドセルロースを亜塩素酸で酸化してジカルボキシセルロースとし、メチルエステル化した後、pH9.2〜9.3に制御してヒドロキシルアミン試薬を作用させて、ヒドロキサム酸誘導体に変換された生成物を調製した。この生成物は種々の金属イオンと特徴的な色調を示す金属錯体を形成することを示した。また銅イオン、鉄イオンのような特定の金属に対する親和性が強く、特定の金属イオンと優先的に結合する選択性のあることを示した。さらに金属イオンを取り込んで生成したヒドロキサム酸金属錯体が過酸化水素の分解反応を促進する触媒活性のあることを実証した。次いでジアルデヒドセルロースにヒドロキシルアミン試薬をpHを制御して作用させて、オキシム型セルロース誘導体に調製した。この生成物を還元して、第1級アミノ基に変換された官能基を分子内に有する特異なジアミノセルロース誘導体に調製した。調製した生成物の性状及び化学構造的特性について検討するために、化学分析、IR,NMR,GPCによる機器分析を行い、分子構造的特性について解析した。そして生成物に含まれる第1級アミノ基に適用される有用な反応について検討した。
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