研究概要 |
日本産イチイ科樹木,キャラボクの抽出成分中から有用な生理活性物質あるいは生理活性物質に変換可能な化合物を見い出し、これらのバイオテクノロジーによる生産について研究し、以下の研究結果を得た。 1.キャラボク中の抽出成分,生理活性物質:キャラボク葉から、2種のビスフラボン,スキアドピティシン,ジンクヂチン,2種のフラボノール,イソラムネチン,ケルセチンと2種のタキサン型ジテルペン,タキシニン,タキシニンBを単離した。2種のビスフラボンは血圧降下能を有し、2種のフラボノールは抗酸化能を有していた。タキシニン,タキシニンB、特にタキシニンは葉に多量に含まれており、またリパーゼによる酵素変換によりtaxol類化合物に変換できる可能性が示唆されたので、これから有用物質調製が可能と考えられた。キャラボク樹皮より、含量は少ないものの強力な抗ガン活性を有するタキソールを単離した。以上の結果から、バイオテクノロジーによる有用物質生産のターゲットとして、タキシニンとタキソールを選定した。2.タキシニンの酵素変換によるtaxol類化合物の調製の試み:タキシニンの13位のエノンカルボニル基を還元した後、別途合成したtaxol側鎖部のフェニルイソセリンとリパーゼにより縮合させ、taxol類化合物を調製しようと試みた。フェニルイソセリンの合成は達成されたが、タキシニンの13位のエノンカルボニル基の還元が難しく、現在検討中である。3.キャラボクの組織培養によるtaxolの生産:キャラボクの葉,軸の組織培養によりtaxolが生産できることを見い出した。組織培養により生産されるtaxolの含量は母植物のそれの1.1倍であった。Taxol生産を増加させるため、キトオリゴ糖を用いて、エリシター処理を行った。その結果、最高10倍taxol含量を増加させることができた。
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