酵母抽出物中に含まれるシイタケ子実体誘導物質を明かにする目的で、まず各種の有機溶謀による遂次抽出をおこない、得られた抽出物をペプトン・グルコース基本液体培地に添加してシイタケ子実体発生試験を行った。しかし、エーテル、酢酸エチル、n‐ブタノールなどの抽出物には活性は認められず、したがってシイタケ子実体誘導物質は高い極性を有する物質であることが推定された。そこで、酵母抽出物のゲルクロマトグラフィーをセファデックスG-25および純水で行い、紫外線(254nm)の吸収ピークの位置を元に、大きく5つのフラクションに分画した。この5つのフラクションについてシイタケ子実体発生試験を行ったところ、いずれのフラクションにも活性が認められた。このことは、酵母抽出物に含まれるシイタケ子実体誘導物質は単一の物質とは考え難く、いくつかの物質がシイタケ子実体の発生に寄与していると考えられる。しかし、2番目のフラクションを添加した場合には、供試した培地のすべてからシイタケ子実体が発生し、酵母抽出物を添加した場合とほぼ同様の効果が得られたことから、酵母抽出物中に含まれるシイタケ子実体誘導物質の主体は、このフラクション2に存在するものと考えられた。次に、酵母抽出物から分取したフラクション2に含まれる栄養成分を明かにする目的で、各種の呈色試験を行った。その結果、このフラクションには、糖、アミノ酸および核酸がかなり多量に含まれていることが分かった。さらに、多くの菌類の発育因子として知られるビタミンB_1もこのフクラションに存在することが明かとなった。これらの物質はいずれも菌類の発育因子として知られているため、今後はフラクション2に含まれる糖、アミノ酸、核酸およびビタミンをそれぞれ定量し、それらのシイタケ子実体発生の及ぼす効果について検討することが必要となった。
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