研究概要 |
有用海産藻類アオサ科植物のアナアオサ,ウスバアオノリを材料として,これらのプロトプラストの作成と培養,プロトプラストの融合と融合細胞の形成,培養に関する基礎的条件,その実用化の可能性について検討した。プロトプラストの作成は,細胞壁処理酵素としてアメフラシの中腸腺からの抽出酵素を使うことにより,アナアオサ,ウスバアオノリで96.8,110.2×10^4個/mlのプロトプラストが得られた。細胞壁再生速度はアナアオサの方がウスバアオノリよりも早いことがわかった。温度が低いと再生速度が遅くなることも判った。プロトプラストからの再生個体は球嚢状,双極,単極の発生様式を示した。細胞融合の基本的条件としての電気刺激法の条件を定めた.この条件により,0.2〜0.25%の細胞融合率が得られた.融合細胞には葉緑体が2個あり,大きさは融合してないもの1.2〜1.5倍あった。融合細胞は双極性の発生様式を取り(一極から葉状体,他極から仮根細胞を形成する),個体を形成した.しかし,個体は完全に生育・成熟する前に死滅してしまった。 これらの結果から,アオサ科植物のプロトプラストは細胞壁再生,個体再生,融合能等を全て備えていることが判った。融合細胞の形成とその培養による個体形成が出来たことは、融合細胞による個体作成とその種苗化も可能であることを示唆しており,この融合法を用いた倍数体の作成と種苗作成もまた可能であることが判った。しかし,今回の研究では融合細胞から完全に生育・成熟した藻体を作るに至らなかったと,融合細胞から次世代を作るに必要な生殖細胞が得られなかった。このことは,融合細胞から作られた固体についての正活史を確認したことにならない.今後,この点について確認を進めると同時に,個体の生育・成熟の安定性,既存のn,2n個体との競合(バイオハガード)について検討を進めることが重要であることが判った.
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