研究概要 |
1)硬骨魚ウマヅラハギを使い、目の遠近調節反射の遠心性成分を確認すると共にその求心性成分を実験的に検討した。実験にはHRP(ペルオキシダーゼ)法を用いた。まず第一に水晶体筋にHRPを注入し、約100個-50個の大型の毛様体神経節細胞がHRPで標識された。毛様体神経節にHRPを注入すると、中脳被蓋部にあるEdinger-Westphal(EW)核の細胞のほとんど(約100個)がHRPで標識された。このことから、遠近調節反射の遠心性成分が約100個前後の細胞によって構成されていることがわかった。 2)遠近調節反射の求心性成分を明らかにするため、次にEW核を含む脳の小領域にHRPを注入した。その結果、網膜から直接投射を受ける後交連核の細胞の一部がHRPで標識された。これらの一連の実験から、遠近調節反射の全体像がはっきりした。つまり、硬骨魚類での遠近調節の情報は網膜‐後交連核‐EW核‐毛様体神経節‐水晶体筋という経路を流れることがわかった。さらに最近、後交連核にHRPを注入することによって、後交連核の細胞がEW核に神経線維を送っていることがはっきりした。つまり、上記の遠近調節の反射回路の全体が実験的に証明されたことになる。 3)以上の結果を学術雑誌(Phil.Trans.R.Soc.Lond.B,337:73-81,1992)に発表した。またこの研究の最近の進展を平成5年4月の日本水産学会で発表する。現在も実験を継続し網膜のどんなタイプの神経節細胞が遠近調節の情報を担うかを探究している。 4)今回の補助金で導入された電気生理機器によって、HRPの注入部位がより簡単に探索できるようになった。また、本報告書も今回の補助金によって購入されたパーソナルコンピュータで作成されたものである。
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