研究概要 |
sn-1位に高度不飽和脂肪酸を結合するリン脂質の合成を試み,次の知見を得た. 1.中間水分活性域以上の反応系中の水分はリン脂質への高度不飽和脂肪酸導入の初速度を速めるが,加水分解を同時に促進し,収率の低下をまねくこと. 2.低水分活性域ではリン脂質への高度不飽和脂肪酸導入速度は非常に遅いが,比較的高収率が得られること. 3.反応系中の水分の高精度制御とポリアルコーの併用によって,理論上の上限までリン脂質のsn-1位に高度不飽和脂肪酸を導入でき,且つ最大80%の回収率を得られること. ついでsn-1位に高度不飽和脂肪酸を結合するリン脂質の生理活性について検討し,血清存在下でsn-1位にEPAを結合するPCはその濃度が10μg/ml培地のとき,レチノイン酸単独の場合のヒト前骨髄性白血病細胞(HL-60細胞)分化誘導作用に比べ,レチノイン酸量約10倍に相当する細胞分化誘導効果を有することが認められた.これはsn-2位に高度不飽和脂肪酸を結合するリン脂質のヒト前骨髄性白血病細胞(HL-60細胞)分化誘導促進作用とほぼ同一レベルであった. 今後は個々の脂質クラス,分子種について高度不飽和脂肪酸を組かえて生理活性の評価を行う予定である.分子種と生理作用との間の構造機能相関を見いだすことを最終目標に考えている.
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